ザザンと、波の音が聞こえる。 透き通るような青空。それと同じテレビで見るような綺麗な青い海。 その波打ち際に1人の少年が打ち上げられていた。 腰よりも更に下まで伸びた黒くて長い髪が特徴的の少年。 その少年がのろのろと起き上がる。 「ここ…何処だよ…?」 少年は辺りを見回しここが何処だかを確認する。確認したところで全然何処だか分からないが。 「何ここ?外国…?いや無人島か?無人島も外国か?どっちでも良いけど…ていうか、俺、何で浜辺に打ち上げられてんの?……俺はイルカですかコノヤロー!!」 少年は泣き出しそうな声で誰も居ない浜辺で、一人叫ぶ。 少年の名は、箕蒼 蘭。年は16。見た目は長髪でなければ平凡な高校生。 特技と言えば、暗算。どんな問題でも直ぐに答えがでる。そのため数学は超天才だが、他の教科は平均か下。成績は数学で引き上げて平均よりも少し上になっている。 「はぁはぁ…疲れた。とりあえずこういうときは落ち着くに限る。いいか落ち着けぇ…落ち着け箕蒼蘭!」 言っていてなんだが、全然落ち着いていられないランであった。 「俺は今まで何やってた?」 思い出すこと数十分、いや数十秒なのかも知れないが、しかし彼には関係のないことだ。 今脳裏に浮かぶのは、スライドのように断片的に浮かぶ映像。 炎上する甲板、そこに立つ自分、目の前に突き刺さる大剣。 「甲板?船か?船……そうだ俺、皆と懸賞で当たった旅行に着たんだ……でもそれで大剣って?」 ガサッ 前の茂みが揺れた。何かがこちらへ向ってきている。 「人!?」 彼はその揺れた茂みへ浜辺の砂に足を取られながらも走り出す。 が直ぐにその走り出した足に制止をかける。その時にこけたのはお約束だ。 当然だ。ここが無人島であれば、人はいない。いるとすれば動物。もっと言えば猛獣が住み着いている可能性だってあるのだ。 不用意に近づくのは無用心にもほどがある。 とりあえずランは近くの茂みに隠れ、様子を見ることにした。 しばらくして25、6の男性が茂みを書き分けて現れた。 限りなく黒に近い灰色の髪の毛を適当に後ろで束ね、灰色のシャツの上に袖を切ったジージャンを羽織り下はジーパンという服装。 人と確認できた今、ランは茂みから飛び出し、その男へ駆け出した。しかしその瞬間 ベチャ 転んだ。というより倒れた。しかもこけた先は泥。ランは知る由もないが、その時の気温43.5℃。つまりランは熱中症で倒れたのである。 熱中症で消え行く意識、ランは思う。 「もう…助かれば、それで良いさ……」 そこで、暗くなっていく視界を閉ざし、意識を手放した。 ○=目次へ |