第四話 魂喰ライノ目覚メ



沙羅は突然のことで走っている間何か叫んでいたが完全無視で走り抜けた
古い木造建築の家。結構広く亜紀曰く掃除が大変。
門を入って直ぐにある玄関。その扉に鍵を差込み開錠する。
扉をくぐり居間へ沙羅を連れて行き、そこに無理やり座らせ喋り始める。
「さぁ話せ。俺に解るよう、奴のこと、お前のこと、そして…俺のことも」
沙羅は、俯いた後、亜紀を見据え
「分かったわ。私の知っていることは全て話す…」
「さぁ、まず何が聞きたいの?」
「あの、魔獣とかいう奴のこと」
「この世界、私たちの言葉じゃ“現世”とか呼ばれているわ。他にも色々呼び名はあるけどね。で、あの魔獣がいる世界が、“魔界”天使の類がいるのが“天界”ってとこ。で、その魔獣は、魔界から無理やり空間を捻じ曲げ、現世に来た魔界生物。目的は自己の力を強くするためとか、色々有るわ」
「自己の力を強くして何の得があるんだ?」
テーブルの上にある茶菓子を取ろうとする沙羅を睨みつけながら訊く。
沙羅は手を猛スピードで引っ込めながら
「まぁ、主に自分の縄張りテリトリーの拡大、下の位から上の位に上がること。それと趣味とか、何でやっているかも解らないような奴らもいる。だから一概に力を強くするためとかは言えないの」
「じゃあさっきの奴は?」
「あいつは……下級魔獣だったから、多分上級に上がるために人を喰らいに来たのかな?まぁ何にしても、生き残っちゃったし消し去らなきゃいけないんだけどね」
ゾッとするように最後の言葉だけは冷たかった。
「あのドームは?」
「あれは魔術の一つ。基本魔術で名前は“空間制御”。あのドームで囲った部分の空間を制御することが出来るの、まぁ文字通りだけどね。空間を制御できるから、そこで起きたこと全てを隠蔽することも可能。でも、ドーム外と中での食い違いが多いほどその分歪みも大きくなって、外界に漏れやすくなる。でも、その歪みを大きくしたら協会に目をつけられ直ぐに討たれるの
「協会?」
「世界三大魔術結社の一つで、魔術師や陰陽師、祓魔師ふつましその他多数様々な魔術関係の仕事をしている人たちの会社…って所かな?ちなみに私も協会の一員よ」
と胸を張りながら言う。
その仕事に誇りを持っているのか、どこか誇らしくも見える。
「ふーん、じゃあお前みたいのが大量に居る訳だ…と言ってもさほど嬉しい情報じゃないけど…じゃあ、その魔術師って何だ?ゲームで出てくるような連中なのか?」
亜紀も大分落ち着いたのか言葉を発する余裕が出てきている。
「う〜ん。元々ゲームに出てくる魔術師達のモデルって所かな?ほら昔にも魔術師っていたじゃない」
「たしかに、昔は居たな、魔術師。日本にも陰陽師とかが居たわけだしな。でも、おかしいだろ?日本の陰陽師はまだ捜せばいるし、他の国の魔術師よりは迫害されていなかったしな。……というより重宝されていたわけだ。阿部清明とかがいい例だしな。でも魔術師は魔女狩りに遭ってみんな死んじまってるだろ?他にも異端審問官インクイジターの審問に引っ掛かった反カトリック的存在も殺された…それなのに、なんでその魔術師がこの世界に存在するんだ?」
「あはは。そんなことぐらいで魔術師が絶滅することは、まずないよ。殺されかけた人だって魔術使って逃げられた人もいるし。隠れて魔術師やっていた人は、他の人々に教えたり魔道書を書いたりして後世に魔術を残したんだよ。第一魔道書って言うのも、実際はバチカンが決めた禁書目録の中にも入っているのよ?それなのに魔術師が残ってないなんておかしいでしょ?日本でも、昔、切支丹きりしたんが幕府から迫害されたけど、全滅したわけではないでしょ?」
笑いながら亜紀の知識を否定する。
「あ、魔道書って言うのは、代表的なのを言ったら『エイボンの書』、『法の書』、『大いなる教書グラン・グリモア』、『ムーンチャイルド』、『死霊術書ネクロノミコン』……って所かしら」
亜紀はその何の気も無く魔道書の名前を言う実妹の姿を見ながら溜め息を一つ吐き
「で、魔術ってのは…?」
「魔術って言うのは、人の生命エネルギーを魔力に変換して、決められた法則に従い、言霊や魔方陣等の媒介に魔力を通し自分の意思を顕現させることの通称って所」
「じゃあ、あいつが使ったのもお前が使っていたのも…?」
「うん。魔術」
一点の曇りもない回答
少し呆れたように黙り込んだ後、再び口を開く
「でもさ、その“空間制御”とか言う魔法の中で奴らは何をするんだ?」
「主に、人喰いだね」
即答した。
「人喰い、だと?」
「うん」
「でも、人なんか食ったら直ぐバレるだろう?」
「その為の“空間制御”…それに大量に喰らうんじゃなくて、霊力とか魔力値の高い人だけ狙うから歪みも少ないの。行方不明になった人たちの大半は奴らの餌になった人たちだし」
沙羅はとんでもない事を平然と語る。
「で、でも、行方不明って言ってもそんな多くないだろ?」
「もちろん、三大連盟がマスコミも政府も掌握してるからだよ。そんなこと世間に知られたりすると大変だから…意識介入型の魔術で情報を統一しているの」
更なる爆弾発言
情報統率理事会って言うんだけどね。と付け加えた
再び黙り込んだ後、居間までより真剣な声で口を開いた
「さっきのことと、お前のことは分かった…」
「お前は、その協会とか言われる魔術師のヘンテコ組織に属していて、その協会は、その魔獣とか言う奴等が起こした事件を隠蔽工作している所・・・」
亜紀はそこでいったん言葉を止め
でもな、沙羅。と続け
「それで俺に何の関係がある。お前が魔術師で俺は一般人。それだけならいいが、あの時お前は言った。『あれだけの能力を持っていたはずなのに〜』って何のことだ?」
「………」
「黙ってんなよ。お前が教えてくれなきゃ、俺は誰にも聞けない。何でも話すっていう約束だ」
沙羅は少し黙るが、やがて口を開く
「……亜紀は」
「あん?」
「亜紀は知ってる?お父さんとお母さんが離婚した理由・・・」
今までとは違う、感情の無い声が二人しかいない居間に響く。
「知らない」
亜紀は何を感じ取ったか、静かに答える。
「3年前にね、私は魔術師になったの。で、その日にお母さんが離婚した理由を教えてくれたの…その理由は…私と亜紀のせいだった」
亜紀から表情が消える。
「おい、それどういう意味――」
「いいから聞いて!」
沙羅が叫ぶ。それを聞いた亜紀は大人しく黙る。
「お父さんも、お母さんも、立派な魔術師だった…協会からも最強と呼ばれるほど、強い魔力と技術を持っていた。しかし、その強大な魔力が故に魔界の連中からも目が付けられやすかった」
「それでも二人は戦い続け、いつしかは結婚していた。鈴島家も浅沼家も魔術師の名門だったから両親は何も言わずに了解を出した」
「…そして私たち双子の兄妹が生まれた」
「その6年後の春。家族四人で遊園地に行った」
その日は覚えていた。確かその次の日にお袋は蒸発した。
「その日に今日みたいに魔界の生物が襲ってきた」
沙羅は奥歯を噛み締め、感情を押し殺した声で淡々と告げる。
「しかも滅多に現れない、魔王の一柱がね」
魔王の一柱?
「名はウィネ。獅子の頭部を持ち右手に毒蛇を携え黒馬に乗った魔王の一柱……さっき、教えたでしょ?奴らは魔力値の高い人間を喰らうって。それってね、魔術師も例外じゃないの。魔王なんてS級の化け物が来て、そこに魔力の高い一家が居たら、喰われるわ。勿論お母さんも、お父さんも抵抗したわ。私は小さくて何が起こったかわからず泣いていた。あぁ言い忘れてたけど、あの中は魔力の高い人や魔力とかに敏感な人は動けるの。私は後者。でもね、亜紀は違った。亜紀は自分の置かれている状況を把握して、ウィネの元に走っていった」
亜紀の表情は凍っていた、その事実が信じられない。あの日、確かに自分の記憶から抜けている…空白の時間はあった、しかし…
「ウィネは、亜紀を喰らおうとした・・・魔王に喰われかけた人間・・・しかも魔術師でもない、唯の子供がどうしてここに生きて存在していると思う?」
沙羅は悲しそうな表情を浮かべながら亜紀を見る。
亜紀は俯いたまま何も喋らなかった。そんなことは知らない。今頭にあるのは
俺のせい?
「亜紀は、ウィネを触っただけでね、滅ぼしたのよ。その膨大な魔力がウィネを一瞬で包み込み、消したのよ」
沙羅は口を閉じ、そして
「それが原因」と紡いだ。
「あまりに強かった。亜紀の魔力は…元々最強同士の間に生まれた子供。強いのは当たり前だけど、それは私たちの両親の想像を遥かに超していた。だからお父さんは来たるべき日が来るまで亜紀の魔力を封じた。まさか、今も封呪されていたなんて、夢にも思わなかったけど…それで、強い魔力を持っている者が二人もいたら、封じた魔力が再び覚醒する可能性があると考え、二人は離婚した。その時私も離れさせられたのは、双子である私にも強大な魔力が秘められている可能性があったため……今思うと、亜紀の記憶が無かったのも魔力を封じたときの副作用…だったのかもね」
沙羅は後ろに手を付きながら、肩から力を抜く。
「それが、離婚の真実・・・か」
その様子を見て、ようやく亜紀は重い口を開いた。
「うん。そう」
「…訊いていいか?」
「いいよ」
「じゃあ何で親父は出て行った?」
感情の色を見せない、虚ろな瞳で沙羅を見つめて問う。
「…分からない」
「協会に訊いてみれば、何か分かるかもしれないけど…私は何も知らない…」
「じゃあ、お袋は?」
「え?」
沙羅は驚いたように目を丸くする。その質問が想定外だとでも言う様に、目を大きく見開き亜紀を見る。
「お袋は、何で死んだ?」
「…どういう意味?」
沙羅は少し眉根を寄せて亜紀を睨む。
「言ったとおりだ、お袋が死んだのは……そのオカルト関係が理由じゃないのか?」
「………」
沙羅はそのまま押し黙ったように何も言わない。それが事実だといわんばかりに……
「そう、なんだな…?」
コクリと沙羅は小さく頷いた。
「相変わらず鋭いね……お母さんは、協会の仕事中に死んだの。表向きには交通事故、だけど…」
つかの間の沈黙。両者共に一言も喋らない。
その沈黙を破るかのように沙羅のカバンから乾いた電子音が流れる。
プルルゥプルルゥプルゥプルルルゥ……
耳障りなほどに長いコール。
「…でていいぞ」
亜紀が口を開き
それに小さく沙羅が頷く。手を伸ばして横に置いたカバンの中から携帯電話を取り出す。
「…はい沙羅です……コードP4875UsO##0062K」
奇妙な言葉を口にする沙羅。それが亜紀には何の電話かは確証を持って言う事は出来ないが、察するところ協会からだと解った。
「はい……先ほどの魔獣の件ですか?すみません……取り逃がしました……え?いえ別に何も有りませんよ…えぇ。それよりあれの場所の特定を急いでください。右腕は完璧に破壊したと思いますが、再生の確立はゼロとは言い切れません。それにアイツは直ぐにでも中級クラスに上がる可能性があります。早急に討滅しなければ面倒です。………はい。……いえ、これは私の不始末です。私がやります。……はい…では」
ブチリと携帯を切りカバンの中に入れる。
「協会ってやつか?」
「うん。さっきの魔獣の件、多分直ぐにでも場所は特定できるから、その時、亜紀はここに居て…結界を張って奴がこちらに来ないようにするから」
プルルゥプルルゥプルゥ
沙羅の言った通り、直ぐに携帯が鳴り始めた。
沙羅は携帯を取り、画面を覗き込む。どうやらメールらしい。
そしたら直ぐに立ち上がり…
「それじゃあ、行って来るね」
寂しそうに笑いながら居間から出て行こうとする。
「おい!待てよ!俺も行――」
「来ないで!」
亜紀の言葉に重ねるように沙羅が叫ぶ。
ビクリと肩を動かし、腰を浮かしたまま停止する。
亜紀の方を向き、さっきと同じ寂しそうな笑みを浮かべながら
「魔術のマの字も知らないような人間があそこに行った所で、足手纏いに成るのがいいところ。私だって万能じゃないし、魔術師としての日も浅い私じゃ、亜紀を守りながら戦うのも楽じゃないの…だから、安心して此処に居て?私が負けるような事は無いから」
沙羅はそのまま玄関へと走り去る。
その背中に何も声を掛ける事すら出来なかった亜紀は、自分の無力さを呪ってか座り込み、テーブルに拳を叩きつける。
「…チクショウ、俺は無力なのかよ…ッ!!」

場所は変わり、とある廃ビルの中、亜紀達の目の前に出現した魔獣は腕の無い右肩を押さえ、低い呻き声を上げていた。
「うぅ…」
肩より少し下を貫かれ、自ら断ち切った右腕は、再生不能。魔光帰の光の力も抜けきれず、身体に後遺症として、右足と右目が使えなくなった。もし魔術師勢に見つかったらアウト、良くて魔界返し、悪くて死。天と地ほどもかけ離れたこの運命。
魔獣は、呻きながら思う、
(魔獣を…助ける者は居ないのか…ふ、人間は助け合い… 魔獣は助け合わん…そして討たれる…皮肉な…話だ…)
動かない右足を引きずり壁へと向う。
荒い息遣いのまま、左手で自分の血を使い魔法陣を描く。
「我が名に従いし、魑魅魍魎ちみもうりょうよ…我が身体に刻まれた、毒を…抜け…」
魔法陣が、薄っすらと赤黒く光だし、そこから同じ色の光球が宙に舞い、傷口に入り込んでいく。
魔術名“魍魎の毒抜き”その名の通り、魑魅魍魎の魔力を使い毒を抜く魔術。これにより、ある程度は魔光帰の力も薄まる。ほっと一息、安堵する。
「これで…毒は、ある程度抜けたとは言え…このままでは、私の身も持つかどうか…さて、どうした物か…」
唸るような声でボヤキながら、右肩を押さえる
『助けてあげようか?』
唐突に、脈絡も無く、誰もいない廃ビルの一室から、細い少年の声が聞こえてくる
「誰だッ!」
魔獣は左腕を振り上げ、野獣のごとき叫び声を上げる。
『誰?うぅん、誰とは言えないなぁ。何せ自分でも誰だか解っていないんだから』
声の主はクスクス女の子のような笑い声を上げながら言う。
『ねぇ、君。助けて欲しいんでしょ?僕が助けてあげようか?』
「貴様のように、影から物を言う奴に助けを請うほど落ちぶれてはいない!」
魔獣は、壁を砕きながら叫ぶ。
『へぇ、驚いた。下級魔獣のくせにちゃんとした意識を持ってるんだ。でもさ、このままだと君、死んじゃうよ?』
笑い声のはずなのに、とても冷たく、魔獣は悪寒を覚えるほどだった。魔獣の脳内に、コイツは危険だと警報が鳴り響き、姿も見えないその“何か”を恐れ、吐き気がする。
『ねぇ、どうする?助けてあげようか?それともこのまま死ぬかどっちが良い?君が無様に助けを請えば、君を上級にしてあげても良いけど、どうする?』
コイツには逆らうな・・・断れば此処で一気に命が掻き消える。
そう頭の中で警報が流れ続ける。
「…助けてくれ…私を、助けてくれ…」
魔獣は歯を噛み締めながら助けを請う。
『不合格〜♪』
背中に巨大な重力が掛かった。
「ぐぁ…ッ!?な、何を…する…ッ!?」
『ざ〜んね〜ん。助けてくれ、じゃなくて、助けてください、でしょう?』
ふざけた様に笑いながら、魔獣の背中に重力を掛け続ける。
『まぁ、プライドの高そうな君が、助けてくれと言えただけでも、褒めてあげよっか?じゃあ、君に力をあげる。オメデト!君も今日から上級魔獣だね♪そうだ、名前もあげよう。うぅん、じゃあねぇ、“フォスニス”!まぁ思いつきで考えた名前だけど、名前は言霊の中でも最も強いから十分だよね、フォスニス?』
メキリと、鉄板が凹む様な音がする。
魔獣に劇的変化は無い。変化したと言えば、無くなった右腕が再生し、頭の角も長くなった程度。しかし、周りの空気は完全に変わっている。
力に姿形は関係ない、重要なのは中身だ。内なる力が強大ならば、おのずと力は強くなる。言霊もその一つ。名前とはもっとも力のある言霊。
日本に髭切という刀がある。その刀は源氏の刀であり、歴史上では何度か名前を変えていて、ある時、源義朝が源氏重代の刀、友切(髭切のこと)を持っているのに敗戦続きで、「世の末になって剣の力も失せたのか」と嘆いていると、大菩薩の示現があり「それは友切という名のせいである。名を髭切に戻せば剣の力も戻る」と言われ即座に髭切と名を改めた。そして源頼朝の代、剣精の戻った髭切を振るい、源氏を勝利に導いたと言われている。
それほどまでに、名前と言うのは重要だ。
そのため名も無かった魔獣は、フォスニスと名を付けられた事で新たな力を得たのだ。
『フォスニス、気分はどうだい?』
「…フフフッ、クハッハ…ファハハハハッ!!あぁ、なんて気分のいい事か!フォスニス…名まで得られるとは…感謝する!」
『それで、君は上級魔獣だ…で、これからどうするんだい?』
静かな少年の声に唸り声を上げ
「決まっている、私をコケにした、あの人間どもを喰い殺すッ!」
『それだけ、力が有り余れば十分だね。じゃあね、もう行くよ』
「ファハハハハハハハハッハハハッハハッハハハハハハハハ!!」
少年の声が聞こえないくらいに、フォスニスは狂喜の叫びを上げていた…

秋、暖房も何もついていない居間で、一人で居るのは中々寒さに堪える。その少し寒い居間で、亜紀は項垂れていた。
別に、妹が心配だとか、そういった理由ではない。自分の無力さを実感したため、軽いショックを受けているだけだ。
目に入る髪の毛を鬱陶しく思いながら、亜紀は壁にもたれかかる。
「俺は…無力、か…」
彼女、沙羅の言い分では、自分にも何か巨大な能力ちからが秘められているらしい。しかし、亜紀は自分の性能を考えても、何かそれに当たるような能力は思いつかない。沙羅みたいに、魔術と呼ばれるものが使えたかと言えば使えないし、手を翳した所で火の玉一つ出やしない。
「何何だよ…俺の能力って……――痛ッ…」
右手でこめかみを押さえる。さっきから、過去のことを思い出したり、魔術のことを考える度、頭痛が酷くなっていく。まるで何か、それ以上先を知ってはいけないかのように…
「痛ぇ…何だよ、畜生…」
下唇を噛み締め、頭痛を呪う。それと同時学生服の内ポケットから携帯のバイブレーションが鳴る。
取り出し画面を見ると、千尋からカラオケの誘いだった。
(今はそんな気じゃない…)
亜紀はキャンセルのメールを送り、そのまま携帯を投げ捨てる。
ガンッ!
と嫌な音を立てて床を転がっていく。
「はぁ……――ッ!?」
溜め息をつこうとしたその時、何とも言えない悪寒が走る。背筋に氷でも垂らしたかのように、寒気がする。
自分の周りだけ温度が下がったのではないカとえるくらいの寒気と、吐き気…
亜紀は洗面所まで走り、腹から逆流する物を全て
「うぇ……ッ!ぐぇ、うぉ……ッ!!」
吐く
吐いて吐いて、吐く物が無くなっても吐き続ける。
ようやく落ち着きを取り戻しその場に崩れ落ちる、洗面台から流れる水の音と、亜紀の荒い息だけが静かな部屋に木霊する。
頭痛が消え、頭の中に膨大な量の情報が流れ始め、さっきの悪寒の正体は、あの魔獣だということにも気付いた。
ヨロヨロと立ち上がり、鏡を見て血色の悪くなった自分の顔を見る。汗だらけで虚ろな目をした鈴島亜紀と、もう一人黒い男が立っている。
バッ、と亜紀は振り返るがそこには誰もいない。しかし鏡にはしっかりと黒い男の姿が捉えられていた。
『汝、力ヲ欲スルカ?』
血の様に紅い唇が開き、地から響くような低い声で音を発する。
亜紀は無言で目を見開くばかり…
『再度問オウ。汝、力ヲ欲スルカ』
亜紀は“それ”が何か解っている。解っているが、認めることができない。
『欲スルノナラバ、我ニ魂ヲ差シ出セ』
『欲シナケレバ、我ハ消エヨウ』
亜紀は奥歯を砕けるくらいに噛み締めた後、ようやく口を動かす。
「欲しなくとも、貴様は俺の体内から消えることは無いのだろう?」
『………』
「欲しなくとも、貴様は俺の魂を喰うのだろう?」
亜紀の問いに男は黙り込む。
「誰が貴様等に魂等くれてやるか!貴様は俺に力だけをよこせ!代償等知った事か!なぁ…――」
亜紀は、“それ”を指し示す名を知っている。生まれる前から、自分の魂に刻まれた最凶最悪の呪い…
「『ソウルイーター』!」
男は黙ったまま、あの紅い唇の端を下品に吊り上げ、ニタニタと不快に成る笑みを浮かべて亜紀を見る。
「貴様、何故そんな契約の真似事をする。俺は、貴様に憑かれた瞬間から拒否権を行使することも無く、魂を喰われることが決定しただろう?」
『汝ノ妹君…死ヌゾ』
突拍子も無いことを言い出す、ソウルイーターを鼻で笑い
「解っているさ。貴様よりはな…だからこそ俺は貴様に力をよこせと言っている。しかし魂はやらん。俺は死んで地獄には逝っていいが、貴様の腹の中に納まる気はこれ程も無い!故に、さっさと力を渡せ!」
『我ガソノ願イヲ叶エルトデモ?』
「あぁそうだ」
『…生ヲ云ウナ小僧!!』
鏡の中のソウルイーターが右手を伸ばし、亜紀に照準を合わせると
『――Soul Eater――Beginning――Six Spears――』
呟くと同時、手から六本の槍が発射される。
「うわっ!」
亜紀はそれを洗面所から出ることで逃げる。
古来より、鏡とは別世界へと繋がっているといわれている。これも同じ、 ソウルイーターは別世界の住人、亜紀の魂に刻まれた呪術。鏡を通し、亜紀とコンタクトを取る。 そして、鏡と通ることで、此方の世界へ来ることができる。
「ソウルイーター、序章、魂喰らいの六槍…久々に見たぜ…」
呑気に感心していると、壁に刺さった六本の槍が、鏡の中に戻る。
「だが、鏡が割れたら、こっちに来ることは出来ないだろう?馬鹿な奴め!」
『馬鹿ハ貴様ダ』
後ろから声が聞こえる。亜紀が振り向くと、ガラスに映った自分の姿が見える。勿論その横にはソウルイーターもいる。
『――Soul Eater――First――Daemon Spear――』
ソウルイーターは虚空から一振りの巨大な矛を出現させ、此方に投げつける。
「ソウルイーター第一、デーモンスピアか!」
疾風のごときスピードで迫る槍をヒラリと避け、窓ガラスに、近くにあった額縁を投げつける。
ガラスが砕け散りその音共に飛んできた槍も砕け散る。
しかし、完璧に粉砕したはずのガラスが窓へとバキバキっと音を立て修復する。
「んなッ!?」
再びガラスは鏡となり、そこからソウルイーターが槍を飛ばす。
「―――ッ!?」
当たる前にガラスから離れ、鏡に移る敵を消滅させる。
『無駄ダ…コノ世界ハ、我ヲ中心トスル異界ダ。汝ニ勝チ目等無イ』
『――Soul Eater――Third――Skewering Spears――』
ピカピカに光る床から、ソウルイーターの顔が覗き、幾本もの槍が亜紀を捉える。
「なッ!?」
亜紀はその場を全速力で駆け抜ける。何十もの槍が亜紀を串刺しにしようと垂直に伸びてくる。
(ソウルイーター第三、串刺し槍・・・ふざけんな!)
近くの部屋に跳び入り何十もの槍から回避する。
「はぁはぁ………クソッ!」
『――Soul Eater――Fifth――Undertaker Spears――』
亜紀の言葉に重ねるように、ソウルイーターの重々しい声が聞こえる。
「葬儀屋の槍達か…って、死んでたまるかぁ!!」
横についている窓ガラス目掛けて、ハンガーラックに掛かっていたワイシャツを投げる。
黒い炎を纏った槍たちが、ワイシャツを焦がす。
その隙に台所へと走り、武器を確保する。武器といっても、銀のナイフと、包丁、あとは銀のフォーク、そして俎板だが・・・布巾で、得物を固定してしっかりと持つ。そしてある程度大き目の布巾を持ち、裏口へ向う。その間も鏡になりそうなものに映らないよう気をつけながら歩く。
裏口まで何とか辿り着き、ドアノブに手を掛け外へ出ようとする。しかし、ドアノブは回るには回るものの、一向に開く気配が見えない。
「ち…ッ!」
『無駄ダト言ッテイル…此処ハ我ガ作リシ異界…汝ニ脱出スル方法ハ無イ』
背後に掛けてある額縁からソウルイーターの顔が覗く。
「脱出?そりゃ何の話だ?俺はお前を力ずくで手に入れようとしてんだ…なぁ、鏡の中の住人!」
ナイフとフォークを額縁目掛けて放つ。
ソウルイーターは無表情で驚き、鏡から消える。
ナイフとフォークはそのまま額縁の中へと消えていった。
「思ったとおりだ、貴様は俺の魂に刻まれている。だから鏡を通し俺に攻撃が出来る。ならば俺が貴様に攻撃できない筈が無いだろ?しかも、脱出なんてのは最初から考えてもいない・・・もとより貴様を此処におびき寄せるためだ!しかも、お前は俺に刻まれている・・・これがどういう意味か解るか?つまり、お前が作った術式等、俺には筒抜けだ。ようは無意味何だよ!」
ソウルイーターの出現と共に蘇った魔力を、ドアに突き立てた包丁に流し込む。
「“舜刃”!」
突き刺さった包丁が、軽い爆発音と共にドアを突き破る。
そこから外へと出て、新たな術式を組み上げる。
辺りは夕暮れ時のような朱色に輝きそれに黒い帯が集まり鳥篭のように成っていた。おそらく、ソウルイーターの空間制御か何かだろうと亜紀は直感し、ならば安全だと理解し、術式の完成に集中する。
「来たれ、我望みを叶えし者よ!我は水を欲さん!この区切られし世界を覆おう、水を我に与えよ!」
亜紀が唱えると水のドームが出来た。空を覆う水が亜紀の足元をも覆うと、続けて亜紀は呪文を唱える。
「我名に従いし氷の精霊達よ!我を取り囲む水を凍らせろ!その凍てつく冷気を使い、氷の世界を築け!」
唱え終わると亜紀は足を魔力で強化して、大きく跳び上がる。それと同時、亜紀が出現させた水は全て凍り、氷のドームを作り上げた。
肌を突き刺すほどに寒い、10月の始まりだとは思えないほどに寒い。
『何ノツモリダ?』
暑く張った氷に亜紀の姿と、ソウルイーターの姿が現れる。
亜紀はさっき使った包丁を拾い上げ、小さく呪文を唱え氷の日本刀に仕上げる。
「何のつもりだ、って訊かれてもなぁ…それより、そこから出て来いよ。決着つけようや」
『………』
黙った後、氷に映るソウルイーターが動き出す。一振りの槍を出現させ、手を天に突き出す。
バギンッ
と、氷の地面から黒い手袋を嵌めた手が突き出され、そこから槍を使い、氷を砕きながら、鏡の世界から此方の世界へと出てくる。
『後悔スルコトニナルゾ?』
「はん、お前に憑かれた時点で後悔なんて言葉は捨ててきたさ」
『………何モ言ウマイ…』
「そうだな」
互いに得物を翳し、構える。
『――Soul Eater――First――Daemon Spear――!!』
「霧氷蓮殺!!」
互いに踏み込み、相手の命を奪おうと、得物を振り切る。
一瞬の刹那。常人には見えない10分の1秒の世界。魔術師であるが故、この世界に立つことが許される人間亜紀、伝説で生き続けたが故、この世界に踏み入った化物ソウルイーター
互いが交差し、静寂が訪れる。
その静寂を破る音はドサリと何かが落ちる音だった。氷の地面に落ちて、氷上を滑っていく、生首…
氷のドームが砕け散り、水にもならず、本当に消えていく。一滴の水も残さず、この世界から消えていく。
『………見事…成リ』
落ちた生首が喋りだす。
勝ったのは
「何が見事だ、死んじゃ、いないのに…」
亜紀の脇腹に風穴が開いている。
ソウルイーターは、落ちた首を拾い、自分の首の上に乗せる。
『シカシ、見事デハアル』
勝ったのは、ソウルイーター。
亜紀はその場に崩れ落ちる。傷が余りに深いため、もう感覚も麻痺していて痛みを感じる余裕も無い。
「さすが…ソウ…ルイーターだ。」
ソウルイーターとは魂喰らい。喰らった魂の数だけ命は無限。
血のついた槍は消え去り、ソウルイーターは亜紀に向かって歩き出す。
『汝、解ッテイテ、決闘ヲ挑ンダノカ?』
「け…闘?はん…言・・・たろ?俺は、おま…えをと…り…込むって…なぁ」
震える声で言葉の端をつなげていく。
「おま、お前に…やる…魂………は…今もない」
『シカシ、汝ハ死ヌ』
「死…な…ゲホッ…さ…」
口から血の塊を吐き出す。
「俺が…、死な……ない…って言…んだ…死ぬ………筈が、無い」
さっきよりも言葉の間が長くなっている。
ソウルイーターは強がりだと思う。いや、実際強がりなのだろう。それは亜紀自身も分かっている。しかし、自分が死ぬという事は…最愛の妹の死でもある。
「アイツ…は、たしかに…ゴホッ…今の……ま……じゃ…死…間ちが…いなく…死ぬ…協会とか……ガッ…から…ゲホッ…増援……が来る……前…死ぬ……だから…ガハッ…たす…ない……い、けない…ぜ……いに」
繋げて言うと『あいつは確かに今のままじゃ弱くて、死ぬ。間違いなく死ぬ。協会とか言う組織から、増援が来る前に死ぬ。だから、俺が助けないといけない。絶対に』
『……………』
ソウルイーターは何を思ったか黙り込んだ。
亜紀は首だけをソウルイーターの方を向け、虚ろな瞳で、彼の血のように赤い瞳を覗く。
『デハ、汝…ドウヤッテ、妹ヲ助ケル?』
「………」
亜紀は黙ったまま、
『我ガ、情ヲカケル筈無カロウ』
冷ややかに笑いながら、亜紀に言う。
亜紀はそれでも黙る。
気絶か、はたまた、絶命したか…それでもソウルイーターは言葉を続ける。まるで、念仏を唱えるように…否、食前の祈りの様に……が正解か。
『汝、何故我ヲ取リ込モウトスル?アノ魔獣、汝ノ能力ちからナラバ、殺ルノハ訳無イダロウニ…』
口元はグンニャリと下品に笑っているが、血のように赤い瞳は、笑うと言う言葉を捨てたかのように、冷徹に亜紀を見下ろしていた。
「……ッ、……―――ッ!!」
何かを叫ぼうとするが、亜紀の口からは声にならない“音”だけが発せられる。
ソウルイーターは、亜紀に手を翳し、冷たく言う。
『汝、死ヌ前ニ何カ言イ残スコトハ、無イカ?』
『――Soul Eater――First――Daemon Spear――……』
悪魔の一振りを出現させ、亜紀の脳天に当てる。
「……何のつもりだ?」
亜紀は自分に魔力が流れたことを悟る。
『我、流儀ダ』
亜紀の問いにソウルイーターは答える。
最期に言葉を残すことが、か
亜紀は思い。そして、力ない笑みを浮かべ、叫ぶ。
「お前の負けだよ、ソウルイーター!!」
刹那、亜紀から光が放出され、辺りが真っ白になる。
『……ッ!!?』
ソウルイーターはその真っ白な世界の中、自分の持っていた槍を掴まれたことに気が付き、慌てて手を離しバックステップで間合いを空ける。
『汝、何者ダ!?』
「…何者だ?…俺は、俺だ。それ以外の何者でもない…月並みの台詞だがな、それが俺だ!」
ソウルイーターが亜紀に流した僅かな魔力を、足と腕に集中させる。
「――Soul Eater――First――Daemon Spear――!!」
ソウルイーターから奪いとった槍に言霊をのせ、ソウルイーターを貫く。
『グッ…ッ!?』
瞬間、ソウルイーターは自分の油断に苛立つ。一瞬の驕りが自分の命取りになるなど基本中の基本だと言うに… (残ってる魔力は、後三十秒で切れる!そのうちに吸収しないと!)
「去れ!闇より来たりし魔の生物よ!我は光、闇を射殺す聖なる矢なり!!」
亜紀は呪文を唱え、左手に魔力を集め光り輝く弓を顕現させ
「“エイワズ”!!」
その弓を、ゼロ距離でソウルイーターに撃ち込む。
『ガッ……ッ!!』
重苦しい低い声を漏らし、亜紀から離れようとするが、槍が深く脇腹を突き刺しているため、動くことが出来ない。
『クッ……!』
(あと、20秒!!)
「風よ!全てを捉える鎖と成れ!!」
無風だった庭に何処からともなく風が吹き、ソウルイーターを拘束する
(デーモンスピアは闇の槍。ならば、その構成がわかれば、聖槍をも創れる!!)
「来たれ!かつて世界樹の水を飲み、死の神でありながら魔術を会得した大いなる知識の神!!その右手に持ちし聖なる槍を我手に現せ!!」
メキ、メキと音を立てて亜紀の左手に光が収束する。さっきの弓とは比べ物に成らないほどに…
(コノ、魔力ノ流レハ!!)
ソウルイーターはその異常なまでの魔力の流れに怯え、封じられた身体を無理やり動かしデーモンスピアを叩き折り、亜紀から離れようとするが
(遅い!!)
「“グングニル”!!」
デーモンスピアを折るという一動作に生まれた隙、ほんの刹那の世界だが、亜紀はそれを見逃さず、トネリコの柄を強く握り締め、ソウルイーターの眉間にそれを突き刺した。
ブスリ
と、生々しい、槍が肉を貫く音が、静かな鈴島家の庭に響く。
ブシャアッ!
此処まで来てしまうと、コミカルに聞こえなくも無いほど、軽快な音を立てソウルイーターの眉間から血飛沫が上がる。そう、それは血の噴水と称しても可笑しくは無いほどの血飛沫。
グリ、と槍を右に回し引き抜く。そして、その引き抜いた痕に折れたデーモンスピアを刺しこむ。
「影よ、我は喰らう、魂を喰らいし者をも喰らう!」
唱えた直後、亜紀の影にソウルイーターの巨体が、ズズズ、と何かを引き摺ったような音を立てながら呑み込まれていく。
(あと、7秒!!)
だが、魂の吸収はソウルイーターの十八番オハコ)。
眉間に開いた穴は塞がっていないのに、彼の、血の様に紅い唇をワナワナと震わせ、あの血から響くような唸り声を上げる。
『舐メルナ!!』
ガキン
と、磁石がくっ付いたかのような金属音がすると、亜紀の影から、飲み込まれたソウルイーターの身体が戻ってくる。
『我ガ汝ニ分ケ与エタダケノ魔力デ、我ヲ喰オウ等、片腹痛イ!!』
「クゥッ!?」
『タッタ其レダケノ魔力デ何ガ出来ル?!』
残りは4秒
亜紀は影から出て行こうとするソウルイーターを、自分の力を全てつぎ込み、自分の中に捕らえようとする。
『魂喰ライトハ、魔力値デ決マル!我ヨリ魔力ノ低イ、汝如キデハ我ヲ吸収スル事ハ不可能ダ!!』
3秒
その言葉にピクリと眉を動かし、亜紀は怒りにみを任せながら叫ぶ。
「力は、魔力だけじゃねぇ!!どれだけ、魔力に差があっても、最期に物を言うのは魔力じゃねぇ!魂の力だ!!どれだけ絶望的な戦力差でも、どんだけ魔力に差があっても、魂が壊れなければ負けはねぇ!!」
2秒
『………ッ!?』
亜紀の言葉を聞いて、ソウルイーターに一瞬の揺らぎが起こる。ほんの僅かな、蟻の鳴き声のように僅かな揺らぎ、そんな揺らぎでさえ、刹那の世界では命取りになる。
ソウルイーターの足元が滑ったかのように崩れ、亜紀の影に引き込まれてゆく
残り……1秒
ズズズズ……
ずっと続いていた、何かを引きずったような音が不意にやむ。そのとき、亜紀の前にソウルイーターの姿は無く、影が全てを呑み込んでいた
0
バタリと操り人形の糸が切れたように亜紀が地面に倒れこむ。

ドサリと乾いた音が響き渡り、朱色の世界に木霊した。


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