第二章 世界の激変、俺の運命



前回の冒険から、二ヶ月後。満身創痍で戻って来た俺達。
サキは、ウェルチさんが治して、俺達は軽い応急手当。
その後も、何度か冒険にでた。
薬草を摘んでくるとか、ちょっと大きい蛇を倒したり。
そんな、下の下のような、依頼をやっていた。
皆怖かったんだ、最初の冒険で死ぬような目にあった奴も居るから。
でも世界は、いや、運命は俺達を休ませてはくれなかった。
まだ、最初の冒険で受けた心の傷が癒えてない、そんな時に奴等はやってきた。
今でも鮮明に覚えている。
…月が昇った。
紅い月が…
そんな夜に、奴等はやってきたんだ。

魔族。

奴等が攻めてきた、この世界に。



『ドォゥゥン!!』
そのような爆音が闇夜に響き渡った。
「!、な、なんだ?!」
俺は飛び起きた。
そしたら、神殿の人達が兵士も、冒険者も関係無く皆を集めていた。
俺は、仲間を起こし、準備を整えて、ウェルチさんの所へ行った。



「ウェルチさん!」
扉を開けるのと同時に俺は、叫んだ。
「どうなってるんですか?!」
「ちょっと待って!今説明するから。」
ウェルチさんも、叫んでいた。
ウェルチさんは二呼吸置いて、話始めた。
「今、このクラン・ベル周辺地域は、魔族による侵略を受けています。
そこで、今全戦力を導入して応戦に当たってもらってる。
冒険者にも、勇士を募って参加してもらってるんだけど、ちょっと分からないの。で、神殿的には使える戦力は使いたいんだけど。
私自信は、貴方達にはお勧めできない。それでも…」
「やります。」
ウェルチさんの言葉が終らないうちに、サキが言った。
「皆やろっ。傷を負うことは怖い。けど、それで立ち止まってたら意味が無いじゃない!!」
「…」
俺達は、呆気に取られていた。
「ね?」
サキが聞く。
「…」
「…」
長い沈黙、その沈黙を破ったのは、ノワだった。
「良いんじゃないか?サキ自信がそう言ってるんだ、俺は良いと思うぞ。」
「私も。」
キュルケーが言う。
「俺もだ。」
アイゼンも言う。
「ユウキ、後はユウキだけだよ?」
サキがもう一度言う。
「わかった。やれば良いんだろ。乗り掛かった船だ。地獄でも何処でも付き合ってやるよ!」
「そう、わかった。じゃぁ死なないよう、頑張って。」
ウェルチさんは、何処と無く悲しそうに言った。



『ドォゥゥン!!』
「ギャァァアァッ!!」
「ウワァアァァァアッ!!」
爆音、爆風、悲鳴、血の臭い。
誰がどう見たって戦場。
間近に迫る死の影。
「ボーッとしてたら殺られる。行くぞ!!」
ノワが言う。
その一言で俺達は、駆け出した。




…『ザシュッ!』
身体を切り裂く音。
俺達は今戦っている。死ぬか殺すかの瀬戸際で。
だが、
「くそっ!全然数が減らねぇ!!」
そう、敵の数が多すぎたのだ。
そんな中、魔物達がいきなり何者かに対して道を開けた。
俺達に延びるような道を。
「?」
訳が分からない。
だが、その先に居たのは…コートを羽織りフードを被った男。
見覚えのある男、奴の名は、……バロウ。
バロウは俺に向けて言った。
「やぁ、やはり君達か。」
「貴様っ!」
それに対して俺が答える。
「だから言ったであろう? また会えるって。
なぁ、《例の血族》よ。」
「うっせぇ。変な呼び方するな、俺にはユウキって言う名前があんだよ!!」
「それは、失礼した。では、ユウキ君出会って早々悪いが、死んでもらうよ。それが嫌でも二度と闘えない体になってもらう。」
「なるかよっ!!」
その一言から、戦闘が始まった。

「敵の実力は、わからないが、奴は魔族だ。最初から全力で行くぞ!!」
アイゼンの的確な支持。
そう、それは、的確だった。
だが、相手が悪かった。
「行くぞ!〈スマッシュ〉!〈バッシュ〉!〈ボルテクスアタック〉!!」
宣言通りの全力攻撃。流石の魔族とはいえ避けられない。
アイゼンの放った。
真空波は、バロウを捉える。
…だが、
アイゼンの攻撃は、届かなかった、バロウに当たる直前、何かに阻まれたのだ。
「…な、なに?!」
アイゼンは、驚愕する。
当たり前だ、本来なら魔族と言えど、腕の一本位は、持って行っても良いくらいの攻撃だ。
並のエネミー(敵)なら、切り揉み状に吹き飛んでるはずだ。
なのに、バロウの体には傷一つ無い。
いや、バロウが着ているコートにすら、傷が無い。
「?それが、君の全力か?がっかりだ。」
バロウが見下したように言う。
「まだよ!」
キュルケーが言った。「行くよ!〈エキスパート:火〉!〈ファイアボルト〉!〈マジックフォージ〉!!」
(エキスパート:火:その属性のエキスパートであることの宣言。その属性の攻撃が強くなる。)
キュルケーが放つ最大の炎。
その爆炎は、バロウを包み込む。
…だが、またもや、その炎はバロウに届かなかった。
「…!嘘、何で?」
キュルケーは、愕然とする。
「クックック、君達の攻撃は私には届かんよ、諦めて殺されたまえ。」
バロウが笑ながら言う。
「やだね、俺はまだヤル事が在るんだ!こんな所で殺されて堪るかよ!!」
俺は威勢良く言う。
だが、内心は焦っていた、攻撃が当たらない敵をどうすれば良いのかわからなかった。
「うぉぉぉっ!!〈スマッシュ〉!〈バッシュ〉!〈ボルテクスアタァァァァック〉!!!」俺の全力攻撃。
だが、予想通りバロウには届かなかった。
「くそっ!!」
俺は悪態をつく。
「ちっ、ユウキの攻撃が効かないんじゃ俺のは無理だ!」
ノワが言う。
ノワのライフルは、パーティ随一の射程を持つが、攻撃力が高くないのだ。
「諦めたかい?では、死んで貰おう!〈超絶魔力〉!〈魔慌鮮血刄-マコウセンケツハ-〉!」
(超絶魔力:膨大な魔力を保有している証)
(魔慌鮮血刄:魔力が荒れるほどの高圧縮された、鮮血色の刄。
TRPG風に言うと、15D6+20の魔法ダメージ。)
バロウが放った刃状の魔力が俺達を切り裂こうと飛んでくる。
…だがそこに。
「それはさせねぇ!〈インタラプト〉!」
(インタラプト:驚かせたり、不意をついたりして、相手の行動を阻害するスキル。)
ノワの放った銃弾により、バロウの攻撃は止まった。
「ぬぅ!そうか、では、一人ずつ仕留めていくとしよう。…〈ヘイスト〉」
(ヘイスト:対象の行動を速くするスキル。)
ヘイストのかかったバロウは、俺達の誰より早かった。
「行くぞ!〈魔導拳〉!」
(魔導拳:魔力を拳にのせて敵を殴る。)
『ドゥゥウゥン!!』
「かはっ…」
バロウの放った魔導拳は、一撃でアイゼンを倒した。
「安心したまえ、峰打ちだ。」
(拳に、峰打ちも何も無いと思われる。)
「死んではいないよ。」
そうして、仲間は次々倒されていった。
アイゼンの次はキュルケー、ノワ、そしてサキ。
そして最後。
俺の番になった。
「では、ユウキ君。」
バロウが、冷酷な声で言った。
「死んでくれたまえ。」
俺は言った。
「ちょ…ちょっと待っ…待ってくれ。」
「なんだね?命乞いなら聞かないよ。」
「違う。最後に…一つ聞かせて…くれ、《例の血族》っ…てなんだ?」
「!、知らないのかい?」
「あぁ、知らない。」
「そうか、だからここまで簡単だったのか。」
「?、な…何の事…だ?」
「…わかった。最後のチャンスを上げよう。
この側にある[水の洞窟]から、東へ一キロメイル、北へ六十キロメイル(一メイル=一メートル)進んだ洞窟に行きたまえ。そこに、君の求める真実がある。」
「俺の…求める真実?」
「そうだ。では、健闘を祈るよ。」
そう言い残し、バロウと魔物達は去っていった。





被害は、あまりにも、大きすぎた。
死者 約二百人
負傷者 約二百五十人
大きすぎる被害だ。


「そう。魔族の一人がそんなことを、」
「はい。」
俺達はウェルチさんに、バロウから言われた事を報告してた。
「行きたいの?」
「はい。」


「わかった、気を付けてね。」
「はい。」
こうして、俺達は、旅立つ事になった。


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