前回の冒険から、二ヶ月後。満身創痍で戻って来た俺達。 サキは、ウェルチさんが治して、俺達は軽い応急手当。 その後も、何度か冒険にでた。 薬草を摘んでくるとか、ちょっと大きい蛇を倒したり。 そんな、下の下のような、依頼をやっていた。 皆怖かったんだ、最初の冒険で死ぬような目にあった奴も居るから。 でも世界は、いや、運命は俺達を休ませてはくれなかった。 まだ、最初の冒険で受けた心の傷が癒えてない、そんな時に奴等はやってきた。 今でも鮮明に覚えている。 …月が昇った。 紅い月が… そんな夜に、奴等はやってきたんだ。 魔族。 奴等が攻めてきた、この世界に。 『ドォゥゥン!!』 そのような爆音が闇夜に響き渡った。 「!、な、なんだ?!」 俺は飛び起きた。 そしたら、神殿の人達が兵士も、冒険者も関係無く皆を集めていた。 俺は、仲間を起こし、準備を整えて、ウェルチさんの所へ行った。 ‥ … 「ウェルチさん!」 扉を開けるのと同時に俺は、叫んだ。 「どうなってるんですか?!」 「ちょっと待って!今説明するから。」 ウェルチさんも、叫んでいた。 ウェルチさんは二呼吸置いて、話始めた。 「今、このクラン・ベル周辺地域は、魔族による侵略を受けています。 そこで、今全戦力を導入して応戦に当たってもらってる。 冒険者にも、勇士を募って参加してもらってるんだけど、ちょっと分からないの。で、神殿的には使える戦力は使いたいんだけど。 私自信は、貴方達にはお勧めできない。それでも…」 「やります。」 ウェルチさんの言葉が終らないうちに、サキが言った。 「皆やろっ。傷を負うことは怖い。けど、それで立ち止まってたら意味が無いじゃない!!」 「…」 俺達は、呆気に取られていた。 「ね?」 サキが聞く。 「…」 「…」 長い沈黙、その沈黙を破ったのは、ノワだった。 「良いんじゃないか?サキ自信がそう言ってるんだ、俺は良いと思うぞ。」 「私も。」 キュルケーが言う。 「俺もだ。」 アイゼンも言う。 「ユウキ、後はユウキだけだよ?」 サキがもう一度言う。 「わかった。やれば良いんだろ。乗り掛かった船だ。地獄でも何処でも付き合ってやるよ!」 「そう、わかった。じゃぁ死なないよう、頑張って。」 ウェルチさんは、何処と無く悲しそうに言った。 『ドォゥゥン!!』 「ギャァァアァッ!!」 「ウワァアァァァアッ!!」 爆音、爆風、悲鳴、血の臭い。 誰がどう見たって戦場。 間近に迫る死の影。 「ボーッとしてたら殺られる。行くぞ!!」 ノワが言う。 その一言で俺達は、駆け出した。 … … …『ザシュッ!』 身体を切り裂く音。 俺達は今戦っている。死ぬか殺すかの瀬戸際で。 だが、 「くそっ!全然数が減らねぇ!!」 そう、敵の数が多すぎたのだ。 そんな中、魔物達がいきなり何者かに対して道を開けた。 俺達に延びるような道を。 「?」 訳が分からない。 だが、その先に居たのは…コートを羽織りフードを被った男。 見覚えのある男、奴の名は、……バロウ。 バロウは俺に向けて言った。 「やぁ、やはり君達か。」 「貴様っ!」 それに対して俺が答える。 「だから言ったであろう? また会えるって。 なぁ、《例の血族》よ。」 「うっせぇ。変な呼び方するな、俺にはユウキって言う名前があんだよ!!」 「それは、失礼した。では、ユウキ君出会って早々悪いが、死んでもらうよ。それが嫌でも二度と闘えない体になってもらう。」 「なるかよっ!!」 その一言から、戦闘が始まった。 「敵の実力は、わからないが、奴は魔族だ。最初から全力で行くぞ!!」 アイゼンの的確な支持。 そう、それは、的確だった。 だが、相手が悪かった。 「行くぞ!〈スマッシュ〉!〈バッシュ〉!〈ボルテクスアタック〉!!」 宣言通りの全力攻撃。流石の魔族とはいえ避けられない。 アイゼンの放った。 真空波は、バロウを捉える。 …だが、 アイゼンの攻撃は、届かなかった、バロウに当たる直前、何かに阻まれたのだ。 「…な、なに?!」 アイゼンは、驚愕する。 当たり前だ、本来なら魔族と言えど、腕の一本位は、持って行っても良いくらいの攻撃だ。 並のエネミー(敵)なら、切り揉み状に吹き飛んでるはずだ。 なのに、バロウの体には傷一つ無い。 いや、バロウが着ているコートにすら、傷が無い。 「?それが、君の全力か?がっかりだ。」 バロウが見下したように言う。 「まだよ!」 キュルケーが言った。「行くよ!〈エキスパート:火〉!〈ファイアボルト〉!〈マジックフォージ〉!!」 (エキスパート:火:その属性のエキスパートであることの宣言。その属性の攻撃が強くなる。) キュルケーが放つ最大の炎。 その爆炎は、バロウを包み込む。 …だが、またもや、その炎はバロウに届かなかった。 「…!嘘、何で?」 キュルケーは、愕然とする。 「クックック、君達の攻撃は私には届かんよ、諦めて殺されたまえ。」 バロウが笑ながら言う。 「やだね、俺はまだヤル事が在るんだ!こんな所で殺されて堪るかよ!!」 俺は威勢良く言う。 だが、内心は焦っていた、攻撃が当たらない敵をどうすれば良いのかわからなかった。 「うぉぉぉっ!!〈スマッシュ〉!〈バッシュ〉!〈ボルテクスアタァァァァック〉!!!」俺の全力攻撃。 だが、予想通りバロウには届かなかった。 「くそっ!!」 俺は悪態をつく。 「ちっ、ユウキの攻撃が効かないんじゃ俺のは無理だ!」 ノワが言う。 ノワのライフルは、パーティ随一の射程を持つが、攻撃力が高くないのだ。 「諦めたかい?では、死んで貰おう!〈超絶魔力〉!〈魔慌鮮血刄-マコウセンケツハ-〉!」 (超絶魔力:膨大な魔力を保有している証) (魔慌鮮血刄:魔力が荒れるほどの高圧縮された、鮮血色の刄。 TRPG風に言うと、15D6+20の魔法ダメージ。) バロウが放った刃状の魔力が俺達を切り裂こうと飛んでくる。 …だがそこに。 「それはさせねぇ!〈インタラプト〉!」 (インタラプト:驚かせたり、不意をついたりして、相手の行動を阻害するスキル。) ノワの放った銃弾により、バロウの攻撃は止まった。 「ぬぅ!そうか、では、一人ずつ仕留めていくとしよう。…〈ヘイスト〉」 (ヘイスト:対象の行動を速くするスキル。) ヘイストのかかったバロウは、俺達の誰より早かった。 「行くぞ!〈魔導拳〉!」 (魔導拳:魔力を拳にのせて敵を殴る。) 『ドゥゥウゥン!!』 「かはっ…」 バロウの放った魔導拳は、一撃でアイゼンを倒した。 「安心したまえ、峰打ちだ。」 (拳に、峰打ちも何も無いと思われる。) 「死んではいないよ。」 そうして、仲間は次々倒されていった。 アイゼンの次はキュルケー、ノワ、そしてサキ。 そして最後。 俺の番になった。 「では、ユウキ君。」 バロウが、冷酷な声で言った。 「死んでくれたまえ。」 俺は言った。 「ちょ…ちょっと待っ…待ってくれ。」 「なんだね?命乞いなら聞かないよ。」 「違う。最後に…一つ聞かせて…くれ、《例の血族》っ…てなんだ?」 「!、知らないのかい?」 「あぁ、知らない。」 「そうか、だからここまで簡単だったのか。」 「?、な…何の事…だ?」 「…わかった。最後のチャンスを上げよう。 この側にある[水の洞窟]から、東へ一キロメイル、北へ六十キロメイル(一メイル=一メートル)進んだ洞窟に行きたまえ。そこに、君の求める真実がある。」 「俺の…求める真実?」 「そうだ。では、健闘を祈るよ。」 そう言い残し、バロウと魔物達は去っていった。 ‥ … 被害は、あまりにも、大きすぎた。 死者 約二百人 負傷者 約二百五十人 大きすぎる被害だ。 「そう。魔族の一人がそんなことを、」 「はい。」 俺達はウェルチさんに、バロウから言われた事を報告してた。 「行きたいの?」 「はい。」 … … 「わかった、気を付けてね。」 「はい。」 こうして、俺達は、旅立つ事になった。 ○=目次へ |